
ITの分野でこのところ注目を集めているキーワードとして「クラウドコンピューティング」がある。この新しいテクノロジーは、企業が推し進めようとしているITのグリーン化にどのような恩恵をもたらしてくれるのだろうか。
ビジネス上のメリットについても併せてお聞きした。

技術的な側面からいえば、話す人の立場によって実にさまざまな説明がなされています。しかし、この技術を使って提供されるサービスを利用する企業側から見れば話は単純です。最大の特徴は「ITシステムを所有するのではなく、利用する」ということ。自分の代わりに誰かがITシステムを運用してくれて、利用側は月額いくらといったように利用料を支払うというものです。以前からあった「ASP(Application Service Provider)」をイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。
現在、クラウドコンピューティングで提供されるサービス、つまり「クラウドサービス」は、大きく3つに分けられます。エンドユーザーに近い方から並べると、「SaaS(Software as a Service)」、「PaaS(Platform as a Service)」、「IaaS(Infrastructure as a Service)」です。
後者2つのPaaSとIaaSは、主にシステムの開発にあたるエンジニアや企業向けのサービスです。一方、SaaSは社員が業務で直接使う電子メールやグループウェアといったアプリケーションをオンラインで利用できるサービス。グーグル社の提供する「Gmail」などが代表例です。クラウドサービスのなかで企業に及ぼすインパクトが最も大きいのは、このSaaSだといわれています。
ビジネスの面から一番関心が高いのは、ITコストを大幅に削減できるという点です。ITシステムを「所有」する場合、まずハードウェアやソフトウェアを購入して、システムを構築するという導入コストが発生します。さらに運用が始まると専門の技術スタッフを張り付けるため運用コストもかかってきます。これに対しクラウドサービスは、モノを所有しないため、導入や運用のコストを大幅に削減できるのです。特に、ハードウェアの購入などが不要になるため、導入コストの削減効果は劇的です。一般に2ケタ、従来の百分の1にまで減らせるといわれています。
また、サービスですから、使いたい時にすぐ使い始めることができ、必要がなくなったら契約を解除できる。市場ニーズが目まぐるしく変化する現代のビジネスでは、トライ&エラーで、しかも短期間で事業の可能性を見極めなくてはなりません。こうしたスタイルにクラウドサービスはマッチしているのです。システム導入のための投資リスクが低いため、事業からの撤退も決断しやすいといえます。
そして、事業に必要なITシステムを極めて短期間に準備できることもビジネス的に大きなメリットです。急きょキャンペーンをやりたいといった時にも、必要なシステムを契約するだけですぐ用意できるわけですから。

一言でいえば、徹底して効率性を追求していることから生まれる効果でしょう。
クラウドサービスは膨大な数のサーバーを集積したデータセンターから提供します。大手データセンターの運用担当者は、一人当たり5千台くらいのサーバーの面倒を見ているとの話もあります。世界中に利用者がいるから、夜間にサーバーが空いているということもないですし、サーバーの冷却は空調でなく外気を利用するといった工夫もする。
その結果、システムリソースは最大限に活用され、電力も非常に効率良く使われることになります。彼らはデータセンターのプロですから、こうしたあらゆる面での効率化を非常に厳しく追求しています。
たとえば、データセンターでの電力効率を示すPUE(Power Usage Effectiveness)という指標があります。「1」に近いほど、電力効率が高いことを示すのですが、グーグル社をはじめとする最新のデータセンターのPUEは1.2程度の値です。一般の企業にあるマシンルームだと2~3といわれます。つまりクラウドサービスの方が無駄な電力を消費していないというわけです。
また、クラウドサービスの利用はブラウザだけで十分です。社員に高性能なパソコンを用意しなくて済むため、こうした点でも省エネにつながるといえるでしょう。
プロフィール

新野 淳一氏
大学でUNIXを学び、1988年に株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、IT系雑誌編集などを経て、いったんはフリーランスのライターに。2000年には株式会社アットマーク・アイティの設立に参画し、取締役就任。IT技術系のWEBサイト「@IT」の立ち上げにも関わる。2008年、「@IT」発行人を退任し、再びフリーランスに。2009年からは、独自の視点でIT業界やオンラインメディアの動向をウォッチするブログ「Publickey」を個人で運営。エンタープライズ系ITイベントでの講演なども精力的に行っている。
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http://www.publickey.jp/





